小さな時代の、大きな孤独。
例えばそれは、家族が寝静まった寝室で、毛布をかぶって聞く小さな自分の呼吸音。
例えばそれは、修学旅行中、ひとり眠れない夜の気だるさ。
例えばそれは、休み時間だろうとも話したくなくて駆け込んだトイレの寂しさ。
例えばそれは、教室の中からそっと抜け出して、誰もいない廊下で見上げた空の虚しさ。
孤独。
孤独。
たまに、虚無。
別にこの世界なんて、自分がいなくてもどうにでもなる。
自分がいなくなっても、いつか誰にも忘れ去られる。
当たり前の中にすぎていく、当然すぎる日常の中で。
時計の針が動き続ける世界のどこにも置く場所がない、異物のような孤独。
そういう、心の中に差し込む、淡い、淡い、青色に気づいた時。
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そういう青色を抱えた人間が、いざ本当にひとりになったなら?
よるべもない中で、逆境や苦難に身を置かれたなら?
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例えばそれは。
発狂したように哲学を求道する小説家志望に目覚めた時。
例えばそれは。
一千人の組織で聖職者として命を張る覚悟を決めざるを得なかった時。
例えばそれは。
もう二度と誰にも頼らずに、自由に生きていく、できなければ死ぬと決めてWebの世界に飛び込んだ時。
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何一つ光のささない世界で、ただ死にたくないという気持ちだけでもがいてた。
暗闇に包まれた果てのない地獄の夜を、ただ彷徨い歩いた。
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ただ息が吸える場所が欲しかった。
いてもいいよと言われる、日の当たる場所が欲しかった。
そして気づいた。
悩み苦しむ人と対話し続けた鴨川で。
林のせせらぎの中、どうしようもない孤独の森を、会う人も行く場所もないのに歩き続けた、野洲川のほとりで。
実業家の祖父の残した神戸の部屋で一人、オンラインの世界から見渡す限りの人が。
「あ、本当は、僕と同じだ」と。
何気ない顔をして、当たり前のような顔でそこに歩く、道ゆく人々。
ネット上に彷徨う、数多の意識体。
その中のいく人かに、まさに、僕の抱えていた、灰色とも青色ともつかないものを抱えて。
数人位一人、そういう人が、いる。
気づかれないように、バレないように、生きている。人生で、息を繋いでいる。
そんな人がいることに。
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居場所がなかった。
そしてその作り方を、誰よりも体はって、己の生きる場所は己で生きると。
「自分の幸せは自分で作れる」
それを成すのが僕なんだと。
そしてそれを導くためにきっと。
そのためにきっと、今僕はここにいるんだと。
いや。
僕はその仕事を「背負いたい」
そう思っていることに、気がついた。
自覚した。
人は己の人生を自覚したとき。
そしてそれを背負うと決めたとき、運命も、宿命も、あらゆる過去もどんな未来も、時の流れすらも、味方につけることができる。
そして、その自覚が生む言葉の力から、味方になってくれる存在まで現れる。
そうすれば。
決して生まれついての強者ではない、むしろ弱々しく孤独から始まった、こんな僕でも。
間違っても屈強でもないし天才でもない。
(強者としての星のもとに生まれついた人たちとは違う。
むしろ、そういう人たちと渡り合える証明のために僕は多分いると思う)
ただ、僕には最高の味方がいる。
自己の運命を自覚し、その運命が僕を味方している。
問われたときは、己の役割が、何を成すべきか、どこへ導くべきか、教えてくれる。
まるで、旅人を導く北極星(ポラリス)のように。
僕には、迷いを消す、唯一の力がある。
真っ暗すぎる暗黒に落ちた、そんな僕だからこそ天空に見つけられた、ただ一つ動かない導きの星の存在。
世界や運命の基準点。基祖。
激痛の6年前から、僕はずっと、空の方角を忘れないように、縋るような気持ちで。
あるいは、ついてきてくださる方の道を照らし、示すために。
その星を見ている。
自覚している。
逆にいうと、その力しかないのかもしれない。
でも、それでいい。
自覚。
その行為が生む心の力・決意の強さ・行動のダイナミックさ。
これのみで、どんな強い人達とも渡り合い、道を拓いていけることを示すのだと。
決して狂わないコンパスであることを自覚し、迷い人のために、方角と基準を示して導くこと。
そのために、今ここにいる。
あなたのユートピアを、作ろう。
世界がどうでも、国がどうでも、壊れない不滅の世界。
絶対の居場所。
心地よく、小さなユートピアを。
生きていける場所を、己の手で。
自分自身を幸せにする、力と智の存在証明を。
この文章が届くあなたのために。
忘れてはいけない、もう心の奥に閉じ込めてはいけない気づきと、抱き続けてきた孤独の意味を、ここに書き残しておくために。